2006年 10月 18日
医療の質を評価する指標についてひととおり紹介しましたが、実際に医療機関を評価するにはどれを使うのがよいのでしょうか。
ここでは、リスクを調整した治療成績とコストが最もよいのではという意見を述べさせていただきましたが、疾患によって最適の評価法が異なるのも事実です。 慢性疾患に対しては、「医療の質4」で、リスク調整成績・コストを使用することも可能と書きましたが、実際は「過程」を評価するほうが良いとされています。 慢性疾患における過程の評価とは、正しいタイミングで正しい薬を処方しているか、定期的に合併症の検査をしているか、必要な生活指導をしているか、ということをチェックすることです。これのメリットは、現在の状況がタイムリーに把握できることです。 結果(成績・コストを含む)を評価するには、慢性疾患の場合はとくに、長期的なデータが重要になります。つまり、治療をはじめて1ヶ月で血圧がいくら下がるかは重要ではなく、何年にも渡って血圧をコントロールすること、10年・20年後に高血圧による脳血管障害や心臓病、腎臓病を起こさないことが重要です。したがって、今治療をはじめた人々の結果を見るには、10年20年待たなくては行けません。逆行性にデータを集めるとしたら、10年・20年前に治療を始めた人のデータになってしまい、それを現在の質として評価・比較したりするのは適切でないかもしれません。 また、予防や健診の分野においても、予防成功率や疾患発見率のデータを集めるには何年も待たなくてはいけません。また、どれだけきっちり問診したかとか、どれだけ念入りにレントゲンを見たか、という過程の評価も困難です。 これらの分野では、結果のひとつである患者満足度が有効かもしれません。とくに、「医療者とのコミュニケーション」に関する満足度は、受診者の疾患予防・早期発見に対する理解度を反映し、それが予防成功率や疾患発見率を反映するかもしれないからです。(こういうデータがあるかどうかは知りません。) さらに、治療成績・コストを使用するのに適した急性疾患でも、成績として測るべきものは疾患ごとに異なります。 つまり、質評価の指標は、疾患ごとに最適なものを選ぶべきだと言えます。生存率、QOL、満足度、診断能力、適切な薬の処方率、医療スタッフの人数などなど、どんな疾患にも何か適切な評価方法があるはずです。これは、政府と各種学会・専門医機構などが、エビデンスと専門家の意見を集めて、決めるのがよいと思います。 政府が学会・専門医機構などに指導すればどうでしょう。指導だけでは甘いので、質評価に消極的な分野の診療報酬を下げるというのもよいと思います。良いのか悪いのかわからないものに、高いお金を払わないのは当然です。(良いものに高いお金を払うのも当然ですが、、) た 追記) これって患者サービスの話じゃないだろ、という意見もあるでしょうが、質の評価と公表は最も重要な患者向け情報サービスなので、「患者サービス」カテゴリに書いています。いまさら変えるのも何なので、ご容赦ください。。
by blogbyoin
| 2006-10-18 04:45
| 患者サービス
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