2006年 11月 25日
外来・入院別や入院一回毎に作っていた紙のカルテや旧式電子カルテと代わって、Longitudinal Medical Recordなどと呼ばれる電子カルテシステムが普及しつつあります。言わば初診時からの全ての情報を、医療者が簡単にアクセスできるようにまとめた電子カルテです。地域の病院でシステムを共有すると、初診でも他院からの豊富な情報を得たり、また他院の他科や救急外来での処方薬や検査結果、診療経過も時を違えずに把握することができます。
病院・診療所と地方自治体が協力して、このような情報共有システムを作れば、重複検査・処方や診療情報提供書(作るのは面倒だし、もらっても内容的にがっかりすることが多い)も不要になってよいと思います。また、リアルタイムの空きベッド情報なども共有すれば、転院や搬送の効率も上がるでしょう。医療の質情報へのアクセスがよくなって、患者が日本中の病院から自分にとってベストな病院を選べる時代が来るとすれば、全国でシステムを統一するのが理想的です。 いくら電子カルテの普及率が上がっても、各病院でバラバラのシステムを使っていては、その効果は限定的になります。むしろ、病院内での利便性だけが上がって、病院間の利便性が変わらないとなると、潜在的に患者の囲い込みにもつながり、患者の不利益になるとも考えられます。 もちろん、このようなことは以前から検討されています。厚生労働省にもかつて「標準的電子カルテ推進委員会」が設置されており、システム標準化の枠組みについて報告書を出しています。ただ、あくまでも「~の検討が必要である」とか「~が望まれる」という提言なので、現段階でどれだけ具体的に進展しているのかはよく分かりません。 この報告書にも出てくるHL7 (Health Level Seven)は、アメリカで設立された医療情報の国際標準を作る非営利団体であり、研究開発と同時に、医療機関に対する標準化の教育や促進も行っています。 HL7の技術は、アメリカの公衆衛生分野でも利用されており、各医療機関の電子カルテシステムからサーバーに集められた情報の中から、医師に報告義務のある特定感染症などを自動的に見つけ出して、公衆衛生機関に報告するというようなシステムが研究・試用されています。将来的には、医療機関と公衆衛生機関の双方向性コミュニケーションを確立して、ワクチン接種歴の記録、医療の質データの収集・公開、臨床判断サポートなどなどといったプランもあるようです。 日本もHL7に参加しており、日本HL7協会という組織があります。 た
by blogbyoin
| 2006-11-25 11:46
| 情報システム
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