2007年 04月 14日
How Physicians Can Change the Future of Health Care
JAMA(3月14日号)に掲載されたHarvard Business SchoolのMichael Porter教授の論文です。有名な著書"Redefining Health Care"において、彼は「患者の利益に基づく医療」を唱えましたが、それは医師によってリードされるべきだというのがこの論文の趣旨です。 「患者の利益に基づく医療」って当たり前のようですが、現実にはそれが何かほかのものによって歪められていることが少なくないのです。医師レベルでそれが起こっている例を挙げると、、 「多くの医師は、同じことをばかりしていると退屈してしまうので、仕事を多様にしようとする。たとえば、ふだん成人ばかりを扱っているある麻酔科医が、麻酔のやり方がまったく異なっていて興味をそそる小児の麻酔をたまにするというように。」(本文より引用) なるほど、たしかに患者の利益が歪められています。たまにやっても、小児麻酔を専門にやっている麻酔科医にはかなわないですから。。私が医学生のころ、肝臓専門のある外科医が「いやあ、たまには胃の手術とかもやってみたいよ。。」と呟いていたのを聞いて、当時は「なるほど、その気持ちはわかる」と思いましたが、肝臓専門の医師に胃の治療をされる患者のメリットはまったくないですね。。 「医師の組織は臓器別の縦割りで、まとまりがなく、時には内科・外科でそれぞれの治療方針を主張して対立したりしている。」 なるほど、これも歪められています。患者の利益を第1に考えると、患者中心に各医師がバイアスをなくして、協調するべきです。同じような病態の人が、内科と外科で異なる治療を受けるというのも、理にかないません。 さらにこれは病院レベルとも言えますが、 「再診料や処方料をかせぐために、安定していても頻繁に受診させる。」 pay-for-serviceの日本にはよくある話です。地方の病院で働いていたころ、1ヶ月以上分の処方は出すなという偉い人からのお達しがありました。ついでに、簡単な手術でも、術前に全身スクリーニングするようにというのもありました。診療報酬をかせぐためですが、「念のため」という呪文によって正当化されていました。。 このような歪みは、医師のレベルだけでなく、病院・学会・医師会・保険者・審査支払機関・政府などすべてのレベルにおいて存在します。これらの呪縛から逃れて、純粋な「患者の利益に基づく医療」というのが、Porter氏の基本理念なのです。 これを医師レベルから始めるべきだというのは、一人の医師としてはとても共感できます。 そうすることが、医師がこの先、特別なプロフェッショナルであり続けることの、唯一残された道であるようにも思えます。 つづく た 追記:Porter氏の直弟子である「や」さん、何か訂正とか補足があればお願いします。
by blogbyoin
| 2007-04-14 11:22
| 医療制度
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